鬼姫伝説 Ⅰ
「いずれは私も、影正殿に倣い鬼の討伐を手伝いたいと思っているのだ」
意気揚々と話す時光に、恐れを感じながら。
それでもその時を無事にやり過ごそうと愛想笑いを浮かべる。
頭の中では鬼羅の事ばかりを想いながら。
「なるべく早くにと思っている」
「・・・はい」
少しだけ期待していた。
父がいきなり用意した輿入れ。
相手が乗り気でなければと。
しかし、その期待も儚く散ってしまった。
「本当に、美しい姫君だ」
噛みしめるように呟きじとりとした視線を送る。
その視線が居心地悪く、そっと視線を逸らした。