鬼姫伝説 Ⅰ
「鬼羅・・・鬼羅なのね?」
「・・・ああ」
「ああ、よかった!鬼羅に会いたかったの」
探るように手を鬼羅の身体に添わせる。
がっちりとした身体、間違いなくそれは鬼羅だった。
「なんでこんなところにいる。しかも、こんな夜中に」
「逃げ出してきたの。私、逃げてきたのよ」
千代は叫んだ。
逃げてきたのだと。
それを聞いた鬼羅は、千代の肩を抱き身をはがす。
「本気で言ってるのか!?」
暗闇でも効く目ははっきりと千代の表情をとらえ千代の言葉が嘘ではないことを物語っていた。
鬼羅は、戸惑っていた。
まさか、そんなことをするなんて。
こんな無謀なことをするとは思っていなかったのだ。