鬼姫伝説 Ⅰ
二人の生活
千代が目を覚ますと、辺りは明るくなっていた。
チラリと視線を動かすと側で鬼羅が壁にもたれて眠っていた。
自分の両手を見ると不器用に包帯がぐるぐると巻かれている。
「鬼羅が・・・」
鬼羅がしてくれたのだろうか。
嬉しくて、胸に手をそっと抱きしめた。
「目が覚めたか」
いつの間にか目覚めていた鬼羅が瞳を開け千代を見ていた。
暗闇ではない、はっきりと目に映る鬼羅の姿。
「今からでも遅くはない、城に戻れ」
「・・・なぜそのようなことを・・・!」
「こんなことをして、影正が黙っているわけがないだろう」
もっと受け入れてくれるものだと思っていた。
しかし、鬼羅は切り捨てるようなことを言う。
千代の胸が痛んだ。