鬼姫伝説 Ⅰ
「千代は・・・それでいいのか?」
鬼羅は少し考え、千代にそう尋ねた。
千代はその問いに、首を縦に振り応える。
「ならば、ここにいればいい」
本当に、それでいいのだろうか。
鬼羅には少し迷いがあった。
それでも、戻れば千代はどこの誰ともわからぬ所へ嫁いで行ってしまうという。
「千代は、俺が守ってやる」
「・・・はいっ」
その思いが、鬼羅を引き止めていた。
千代の笑顔は、鬼羅の心を癒していった。
人間を憎むしかなかった。
恨むしか、ドロドロした感情にのまれながら。
その鬼羅に差し込んできた光が、千代だった。