鬼姫伝説 Ⅰ
「こんな日が、いつまでも続けばいいのに・・・」
千代の呟き。
鬼羅は聞こえないふりを決め込む。
いつまでも、続くはずがないと・・・。
どこかで感じていた。
時光も影正も逃げ出した千代を放ってはおかないだろう。
どうにかして取戻しにやってくるはず。
そんなことは、千代自身もわかっていた。
でも、どうかその時までは・・・。
現実から目を塞いで。
この幸せに浸っていたいと願う。
この幸せな生活はなんて脆い。
簡単に崩れ去ってしまう幸せなのだと・・・。
「ほら、行くぞ」
鬼羅が伸ばした手を取り歩き出す。
不安なことは忘れてしまおう。