鬼姫伝説 Ⅰ
その時、辺りのざわめきに気付いた鬼羅が立ち上がり辺りを見渡す。
大勢の軍勢がこちらに向かってきているようだった。
「鬼羅・・・?」
「大丈夫だ」
鬼羅は安心させるように力強くそう言うと千代の手を取る。
千代は寄り添うように立ち上がり鬼羅の背中に引っ付いた。
次第にざわめきは千代の耳にも届いてくる。
恐怖に鬼羅の手をぎゅっと握る。
「いたぞー!」
男たちの声が響く。
鬼羅たちの姿をとらえた男たちは一層士気を高め二人の元へ向かってくる。
「鬼め!ようやく見つけたぞ!姫君を返すのだ!」
姿を現したのは、影正の家来ではなく時光の家来だった。
何十人もわらわらとやってきて、鬼羅に剣を向ける。