鬼姫伝説 Ⅰ
薄暗い室内。
小さな灯りをともしたそこに、時光はいた。
拳を握りしめ。
悔しさに歯を食いしばる。
苛立ちは消えることなく次第に、それは憎しみへと変わっていく。
自分の手を取ることを拒んだ千代。
あの美しい娘をわがものにできると聞いたときには、上がっていく頬を抑えきれぬほどだった。
初めて対面したあの日、影正が大事に箱入りにしていた理由も頷けるほどであった。
美しい姫だと、にわかに囁かれていた。
もうすぐで我が物にできるはずであったのに。
―私は、望んでここにいるのです!私は、ここで生きていくことを選んだのです!
千代の声が耳から離れない。
「なぜだ・・・」
あの化け物を選んだというのか?
なぜ・・・?