王子の結婚
4人での食事を、なんとか笑顔を装ってこなした
彼らには他に2人の弟、3人の姉妹がいること
イルの数多くいる妃の話
その子供たちの話など、王宮内の人間や生活などの他愛ない話をして食事が終わった
「じゃあ私はもう行くよ」
まずはじめにカイが出て行き、『俺も』とイルも出て行った
ユナは下がっていいのかどうしたらいいか分からず、食事を取り仕切っていた女官に目を向けた
ここにキーナはいない
彼女に仰ぐしかない
するとソウが近付いてきた
手持ち無沙汰にしていたユナの片手を握ると女官に向かい、
「下がっていい、片付けはまた後で来てくれ」
と、人払いをした
彼女が出て行くのを見届けると、握った手をそのまま引いて、部屋の奥に置かれているソファに促した
2人で並んで座る
ソウがユナの方に体を向ける
握っていた手は離されず、今度は反対の手も取られた
ユナの右手をソウの左手が、反対の手も同じように左手を右手で握られる
「はじめから2人で会えればユナにこんな思いをさせずにすんだね、ごめん」
そう言って頭を垂れた
ユナは慌てて『そんな…』と、口に出したが後が続かなかった
「イル兄上がどうしても会いたがってね、だからって長兄のカイ兄上をおいて3人で、ってわけにもいかなくて…
街での噂も知ってたから予想はしてたんだけど」
ソウの声が少し沈んでいた
「分かってはいたんだけど、ユナがカイ兄上に一目惚れしちゃったのはちょっとショックかなぁ
僕は君に会えるのを楽しみにしてたから」
心を悟らせないように、おどけた素振りを見せた
でも、本心なのだろうか
ユナの胸は痛くなるのを感じた
「違うんですっ!」
ちゃんと否定しなきゃダメだ、そう思った
でも否定できるの?
本当にカイ王子に心惹かれてないの?
感情がうまくまとまっていない
でも正直に今の気持ちを伝えようと思った
「確かにカイ王子は素敵な方でした
会った事もない貴方を、私は勝手に思い描いていて…
聡明で優しく、私を守ってくれる逞しさなど、本当に勝手に…
申し訳ありません!」
目を瞑り頭を下げた
頭上から『大丈夫だから』と優しい声がする
見ていないのに微笑んでいるのが分かった
「それで私の想像していたそのままだったんです、カイ王子は
お顔だけなんですけど…何故か寸分違わず私の思い描いてきた方で思考が止まってしまって…」
目を瞑ったままでいた
彼の表情はわからない、でもその言葉に反応した
ユナの手を握る力が少し強くなった
それにビクッと肩が震えてしまったがユナは続けた
そうしないといけないと思ったから
「でも貴方もまた思い描いてきたそのままの方だった
お優しくて、力強さが溢れていて…」
そう言って、顔を上げソウを見つめた
ソウもユナをじっと見つめている
「ありがとう、ユナ
嫌な事を言わせてしまったね」
少し間を置いて、言葉が決まったのかソウがゆっくりと話し出した