王子の結婚
幸せと偽りと
「今日は政務が落ち着いているから庭園で一緒に食事をしようって王子がっ!」
嬉しそうにキーナに報告する
お茶を飲みながら休憩をしていたユナのところへ政務の合間を縫って、ソウが直接そう伝えにきたのだった
それだけを告げるために来たのか、すぐに戻っていった
ソウとのランチの為に身繕いしたいという乙女心から自室に戻り、キーナへの報告と至った
「ユナさま、本当に王子の事がお好きなんですね」
にこやかに笑いながらユナの髪を梳く
「もうっ!からかわないで」
ユナは照れ隠しでそう言ったが、本当にその通りだった
カイを見て取り乱してしまった事は、その後打ち明けられたソウの気持ちを聞いて、何もなかったように、とはいかないが落ち着いた
昔から決められていたことで、そうなることが必然だったこの結婚
例え意にそぐわぬ相手だったとしても避けることはならない
お互いにそういう相手だったのに、見知らぬ相手に心を通わせてきていたのだ
そして一国の王子から伝えられると思ってもみなかった求婚の言葉
『僕と結婚してください』
彼のその言葉で全て溶かされた
この方となら幸せになれる、そう思った
そんな回想をしているユナを知ってか知らずか、
「ユナさまの仰っていた人物像がまるでカイ王子でしたので、どうなることかと思いましたが…良かったです
ユナさまがそのままの気持ちでいてくださって」
そう言った
ユナは少し動揺したが、すぐに平静を取り戻した
「そうなの、私も吃驚したわ
でもそんな私の態度にも嫌な顔もせず、優しく接してくださった
誠意の籠もったお言葉をいただいて、やっぱり私が想ってきたままの方だと思ったの」
ユナの顔は幸せに満ちている
そんなユナを見てキーナも幸せな気持ちになった
ユナに対して嫉妬心を抱いていたのが嘘のように、今は彼女の幸せを見守りたいと心から思っていた
これもユナの魅力の一つなのだろう
誰からも好かれる愛らしい彼女の