王子の結婚
「どこか具合が悪い?」
人払いを済まされた部屋の中
ユナの表情を曇らせる理由が分からないソウは優しくユナを抱き寄せた
「大丈夫です、どこも悪くありません
心配をかけてしまって申し訳ありません
ただ、貴方に会えない時間が寂しかっただけです
こうして抱き締めてもらえれば寂しさなどなくなりました」
頬を染め、ソウの胸に頭を寄せる
偽りの愛情でもいい
貴方の側にいられるのなら…
貴方が私の為に優しい嘘をつくのならば、私は心からの愛情で貴方に仕えていきます
「ユナ…」
優しく呼ぶ声にソウの胸から顔を離す
見上げるとソウの顔が近付いてきて、自然と目を閉じた
昨日はじめて交わしたキス
何度も何度も重ね合わせた
そして今も…
「ユナ、口を開けて」
ふいに唇が離れ、名残惜しい気分になったところでそう言われた
「え?」
と軽く口を開くと同時に再びソウの唇が降ってくる
勢いよく重なった唇から湿った柔らかいものが侵入してきた
ソウの舌がユナのそれを絡めとり、吸い上げ、舐めまわす
わけの分からないまま蹂躙されユナの身体の力が抜けていく
「…んんっ…」
息も出来ない激しい口付けにぐったりとした身体をソウに支えられ、やっと解放された時には潤んだ瞳でソウを見上げるしかできなかった
「そんな顔されたら、僕の部屋に連れ込んでしまいたくなるよ」
ソウもまた昂ぶった気持ちを抑えつつ、ユナが崩れ落ちてしまわぬよう抱きとめた
足元の覚束ないユナを気遣ってソファに座る
ソウの隣に座ろうとしたユナの腰を引き、横向きに膝の上に座らせた
先ほどの激しいキスも、この体制も何もかもが恥ずかしくてたまらなかった
ソウの両手はしっかりと腰に回っていて、できる限り自分の方へと引き寄せられている
唯一の抵抗として顔を背け、視線は合わせていない
というよりも合わせられずにいた
「ユナ、可愛い
こっち向いて」
その言葉を聞いても反応できずにいると手のひらが頬にあてがわれ、否が応なしに向き合わされた
「僕に感じてくれている君はとても色っぽいね
こんな君は誰にも見せたくないな
僕の部屋に閉じ込めて、誰の目にも触れさせないようにして、ずっと2人だけで過ごせたらいいのに…」
その表情は一瞬イルを思わせた
でもそれよりもずっと妖艶な顔をしていた
「私も貴方とずっと一緒にいたい
2人だけでいられればいいのに…」
偽りと思っていても、ソウから与えられる甘い言葉に、自分の感情が溢れ出してとまらない
ソウから放たれる妖艶さに気圧されることなく、しっかりとソウの瞳を見つめる
そんなユナにソウは胸を高鳴らせた
とても17歳の少女とは思えない色香を纏っている
「あまり煽らないで
我慢できなくなってしまうよ?」
自分を抑えるためにもフッと息を吐いて、先ほどの妖艶さは嘘のようににこやかに笑った