王子の結婚
まだ幼いが彼はとても頭が良かった
7つ上の優しい兄が大好きで、いつもついて回り、兄が勤勉に励む傍らに常に共にいたため、自然と彼も吸収していく
元々の素質もあったのか、若い柔軟な頭と身体はどんどん知識を増やし、体躯を鍛え、兄をも凌いだ
4つ上の兄は苦手だった
小さい頃からいつもからかわれ、いじめられてる
最近では女の子を常に隣に連れ、いかがわしいことをしている様を見せつけてきたりする
父はいつも忙しくしていて、上の兄が父代わりだった
母は優しかったが行儀や礼儀に厳しく、いつも人の心を説いた
ある日、過労がたたったのか父が倒れた
何とか持ち直したものの、一国の王である父の不調が王宮の中に不穏な空気を流しはじめる
例え王が倒れたとしても普通なら次の王が立つだけだ
だがこの国は父の治世になり整った
それまでの王は全て臣下に政務を委ね、国は荒んでいった
臣下は王の介入のない無法地帯で至福を肥やし、国の金を食い尽くしていた
その名残があり、まだこの国は貧しい
王がいなくなり、新しく若い王が誕生すれば、何も知らない王に臣下が取り入り、また国が荒れると王宮の中は乱れはじめた
その話は瞬く間に街にも、更には国の外にまで漏れた
父の容態は回復しつつあったが、一度流れた不穏分子はどんどん広がるばかりで、収束がつかなかった
そしてとうとう国が傾きはじめる
街からは不安な声が溢れ、国が潰れる前にと財を出し渋り、経済は回らなくなり更に財政難に陥った
そんな時、王宮は必死に持ち直そうと策を講じる
後継者の選出
それもそんな策の一つだった
彼はもちろん上の兄がなるのだと思った
兄は勉学に励み、身体を鍛え、あらゆる術を身に付け、王になる準備をしているのだと思っていた
しかし選ばれたのは彼自身だった
上の兄は生母の位が低いという理由で後継者にはなれないのだという
下の兄は遊びに女にとかまけ、勤勉さはない
彼は歳の離れた上の兄をも凌ぐ資質を持っていた
異論はなく決まった
大好きな兄が継ぐと思っていたが、幼くも学を積んだ彼にはこの状況は理解でき、すぐに受け入れた
父が回復し、政務に復帰して1年、2年とかけて何とか傾きは収まりつつあるが、財政難は深刻なままだった