王子の結婚
開けられた扉
「結婚の儀は三昼夜かけて行います」
王宮に先に入った一番の理由でもある、結婚式の諸々の準備
今まで目にしてきた結婚式とは全く違うようだ
細かく流れを説明される
まず一日目は神殿の泉での禊
王家に入るため、俗世の汚れを落とす意味を持つという
日が上り、真上にいき、沈みゆくその期に、三度に渡って泉に浸かる
王子にはこの儀式はない
この日に、婚姻を結ぶ者が顔を合わせることは許されない
二日目も顔を合わすことなく別々に、祭司からの説を得て、洗礼を受け、身を清める
そして夜、この儀が始まってはじめて顔を合わす
王子がはじめて女の元に通い、何の隔てもなく寝所を共にすることで、二人の婚姻が神に認められたとされる
三日目は二人が婚姻を結んだ披露となる
まずは王宮内で、新しくソウの後宮に入る者としての挨拶を上の位のものから順次し、王宮外への披露となる
「流れとして簡単に説明しましたが、詳しくこちらの書物をお読みいただきますようお願いします」
官吏だろうか、王宮に来てからはじめて見る者だった
手渡されたかなり分厚い書物は、読み込むのに果たして幾日かかるのか…
それよりも気になることはあったが、どうにもこのご老人に聞き尋ねる勇気はなかった
「本来、この儀の二日目になるまでは会うことは許されていません
ですが、今はもう古と違い形式に過ぎぬゆえ、お二人の逢瀬がかなっております
ただこの三日間は慣例に従いますようお願い申し上げます」
何だか嫌みを言われたような気がしたが、微笑んで聞き流した
細かいことを幾つか言われたがあまり耳に入ってこなかった
結婚するということはそういうことだと分かってはいたけれども…
日まで決められている
しかもそれを翌日、皆に報告するなんて!
(なんて儀式なのっ)
自室に戻ったものの、それが頭から離れず赤くなって、悶々として、青くなる
そんなことを続けていた
近くにキーナがいたことにも気付かずにいた
「ソウ王子がお待ちだそうです」
いきなり声をかけられビクッとする
「どうかされましたか?
いつもとご様子が違いますが」
体調が悪いのかと心配されたが、理由を口にするのもはばかられた
「いえ、大丈夫よ
すぐに向かわなくてはね」
何とか平静を装って会わなければ
すぐに顔に出てしまうユナの不安は、やっぱりすぐにソウに見破られた