王子の結婚
自室に戻り、もう予定は何もないとキーナを下がらせる
王子たちは皆、自分の宮殿を持っていて、もちろん後宮もそれぞれにある
王の娘、姫たちは自室を貰って嫁ぐまでの間を王宮内で過ごす
ユナに与えられた部屋も、その役割のために作られたもの
何不自由ない部屋だが広過ぎるし、常に女官の控える小部屋がある
姫たちはその生活に慣れているのだろうが、ユナは落ち着かない
ユナの家は国の有力な権力者であり、出資者、そして何代か遡れば王家との血縁でもある
裕福で何不自由ない暮らしだったが、過度な贅沢は好まず、堅実な家庭だった
邸は何代か前に建てられたもので立派ではあったが、余計な装飾品などはない
皆の集まる場所は広々としていたが、自室として与えられた場所は適度な広さ
雇っている従者も最低限で、主人にさえ常に仕える者はいなかった
もちろんユナも然り
常に側にいて、世話をしてくれるのはありがたいが、自分のことは自分でしてきたユナにとっては落ち着かない
キーナと友人のようになりたいと思うが、やはり彼女は優秀で、心は開いてくれたが決して従者としての姿勢は崩さない
王家に嫁げばそれは当然のことで、その待遇にも慣れようとはしているのだけれども
一人になる時間は欲しい
そう思い、室内の女官部屋からも出てもらって一人の時間を手に入れる
ここ数日は毎日その時間を作っている
今のユナは客人の扱いでも済ませられるが、ソウの後宮に入った後はどうなるのだろうか
次に彼に会ったら尋ねてみよう、と思いながら先ほど持ち帰った国史書を開いた
何に気を取られることもない一人の空間で、ひたすら文字をたどり、歴史の渦の中へとただ、進んでいく
それはまるで知らない国の物語のようだった