王子の結婚
飢饉や天災に見舞われることなく、平安な一年が訪れるよう、年始には国中をあげて祭が行われる
現国王が即位し、膿みを出しきって新しい規律を定め、国が落ち着いた後の世である
我が国、セイザスはまだ豊かとは言えない状況で、この祭は富を生む策の一つとして国王がはじめた
物品が動き、金が生まれ、人々を動かす
それがうまく回れば新たに富を生む
華やかな祭になればなるほど、街は潤う
それがやがて国の潤いにも繋がるようにと
ユナの生まれたこの年で、この祭も十余年
年々、規模は拡大していき、この年は特に大仰なものだった
それはつまり、経済が回復しつつあることを示す
祭も終わり、街は活気で溢れ、人々がせっせと働く
国に良い流れを運んでいた
その年は王の長子の成人する年でもあった
それと共に王子の婚姻も決まり、街は御祝いの一色に染まっていく
この国は、隣国は細く繋がった一つのみ、あとは海に囲まれた、まるで島国だ
王子の妃になるのはその隣国の姫
同盟を結ぶための政略結婚だった
弱体化し、決して強国とは言えない
再生を図っているこの時期に隣国から攻め入れられては今までの回復が無になってしまう
それは至極、真っ当なことで、街でもその婚姻を喜んだ
隣国の姫との婚儀によって、街ではお祭り騒ぎ
小さな諍いなどは役人の制止で抑えられる程度
平和な日々が続いている
夏の長雨で農作物の不作に悩まされるが、隣国との同盟のお陰もあり、支援に恵まれた
秋が過ぎ、冬が来る間も大きな騒動もなく、平和な一年を終えた
その一冊はとても平和な一年が綴られていた
でもカイ王子は…?
ソウから聞いた思いが頭を過ぎり、二人がかぶる
今の正妃は、国の平和のために決められた相手だった
4人の側室も、利があっての婚姻なのだろうか
王家の婚姻に恋愛を期待するなんて難しいのかも知れないけれど、ソウはかつての政略結婚がどうしても嫌だったと言った
カイ王子も嫌だったのかな?
そんなことを気にしてしまった
何でだろう
妙に気になってしまう
カイがほんの一時でもユナの心に入ってきた相手だったからなのか
国史書には書かれていない、カイの気持ちが知りたいと思った