王子の結婚

三冊目は翌日、読みはじめた

彼から聞いた、国が乱れはじめる年


その年も王が直接出向く視察は多く、同盟国や海外との交易など、政務が立て込んでいく

街では商業が盛んになり、徐々に豊かになっていく民も現れていた


ふた月が過ぎた頃、それは起こる
政務を終え、自室にいる時に王が倒れた
そこにいたのは側近のみ

ここ一年余りの立て込んだ政務がたたったのだろう、丸二日、意識が戻らなかった

王宮内での混乱を避けるために、一部の高官と身内のみしか知らされなかった


王の意識は戻るが、まだ政務に戻れる状態ではなかった
宰相に任せ、秘密裏に療養することとなる



けれどすぐに王宮内でその事実が流れる
政務に出ない日が続き、異変に気付いた、というものではなかった
知れるはずのない状況で、何故か早々に知れ渡った

そして早過ぎる街への流出

明らかに内部からの漏洩だった


しかし、王からそれを探る指示は出されないまま

王がそのまま崩御するのではないかと、噂は膨らみ、臣下たちの不安が煽られる
王の状態を知る者が、それを否定しようとも、疑心暗鬼に陥った者たちには通じない

王宮の外での噂も同じで、瞬く間に街中に広まった

ひと月が過ぎ、王は公には出ないものの人を介し政務を取り仕切る

それでも王宮内は混乱したまま
街ではさらにひどかった

情報が伝わらない分、不安から悪い予想を生み、それが蔓延していく
街ではもう、王が復帰することはないとまで噂され、収束はつかなかった






胸がざわざわして書から目を離す

政が何も分からないユナでさえ分かる異常さ
明らかに仕組まれたもの

国王の不調とはいっても、命には関わらないもの
外部に漏れるはずのない状況
疾走する虚偽をかぶせた過度な噂


内通者がいた…?


これは謀叛だったのだろうか








街での商売が滞りはじめ、金が動かなくなり、職を失う者が出る
流通が減り、物資が足りなくなっていく
絵に描いたように崩壊していった


何とか食い止めようと策を講じる
同盟国への援助の要請、新たな交易による経済の回復など
そして未だ定められていない後継者となる皇太子の擁立

王がソウを選び、議会でも過半数を占め、議決した


政務に完全に復帰した王が民衆の前に立ち、その身の健全を示す

外交は思うようには進まず、財政難は深刻なままだったが、何とか傾きを食い止めることは叶った






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