王子の結婚
重い空気を打破するように、ソウが口を開く
「まずは…
ユナは僕が上辺で愛すのを心得てるって言ったね」
ユナを見る
その目は少し不機嫌そうで
「はい…この結婚で愛情を求めるなんて馬鹿なことは言いません」
堪えたはずの涙がにじみ出て、俯いて顔を見られないようにする
「じゃあ僕は馬鹿だね
ユナを愛したいし、愛されたい
あんなに示してきたのに伝わってなかったなんて寂しいな」
ユナの頬に両手を添えて顔を上げさせる
「僕の想いは伝わってない?」
その涙に確信した
意地をはった可愛いユナを
愛されたいと望んでいると
「でも…会ったばかりの私のことを愛して下さるなんて、そんなこと…
貴方は結婚が決められていたとしても、他の方と心を通わせて側に置くこともできるのに…
優しい貴方は、他に選択肢のない私を大事にしようとして下さる
だから私は、愛されることを求めるのではなく、私が貴方を愛していこうと決めたのに」
もう泣き顔も隠せずに、ソウに気持ちをぶつける
ソウは少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの微笑みを浮かべた
「そんなことを考えてたの?
君を愛すのに時間が必要?
ちゃんと僕は君だけしかいらないと言ったのに」
はじめに言われた言葉
でもそれは私を安心させるためのものだと思っていた
「僕は君と結婚できることが本当に幸せなんだ
不安にさせてごめんね」
涙が堰を切ったように止まらない
愛されることを求めないと覚悟を決めても、心が求めていた
カイ王子の愛の言葉に揺らいでしまうほど、愛されたいと願っていた
震えるユナの身体を力強く抱き締める
「愛してるよ」
一気に心の影が晴れていく
カイ王子に言われて揺らいだのとは違う
ただ、求められたのが嬉しかったんじゃない
ギュッと締め付けられるように痛くて、でも嬉しくて…
ソウからのその一言が欲しかったんだ