王子の結婚
「ねぇ、キーナ
ソウ王子ってどんな方なの?」
まだ打ち解けたばかりなのに、もうすっかり友達かのようにキーナに詰め寄る
「どんなドレスがお好みかしら?
この髪型でいいと思う?」
食事の誘いの返事をして戻ってきたキーナの前には、まさしくデート前の女の子といったユナの姿があった
そんなユナにキーナがクスッと笑いを漏らした
「もう!ちゃんと聞いて」
と、怒ったふりをして、
「こんな会話、誰かとしたかったの!
私、すっごく嬉しいわ」
今度は本当に嬉しそうな顔をした
キーナも嫉妬していたのが嘘だったかのように穏やかな気持ちになる
「私は王子を拝見したことはありますが、お話したりするような立場ではないので、ドレスや髪型の趣味までは分かりかねます
でも物腰の柔らかい方ですので、ユナさまがどんな姿でもきっと微笑んで下さると思いますよ」
王子付の女官とは仲が良いわけではなく、自分も近くで拝見する事はあっても、話を交わすなんて大それた事はしたことがない
でも、ユナに言ったように彼は誰に対しても優しく接している
きっとユナが心を痛めるような事は言わないだろう
そう思ってそのまま伝えたが、ユナは納得できなかった
「そうゆう事ではないの!
王子の望む姿でいたいのに、全く分からないわ
そういえばソウ王子には側室はいらっしゃらないの?聞いた事がないのだけれど」
側室の方がいれば、少しはその方の出で立ちが参考になるかと思いキーナに尋ねる
「はい、ソウ王子はこの度が初めての結婚です」
それを聞いて少し嬉しくなった
後に国王となる王子に嫁ぐのだから、側室をたくさん持つのは当たり前ないこと
でも自分だけを見て欲しいと思う気持ちはどうしてもある
結婚をしてすぐにその気持ちを味わう事がないと知って嬉しかった
それがキーナにも伝わったようだ
「ソウ王子は26というお歳で珍しく誰もお妃を迎えられておりません
ユナさまとの結婚が決まっていたのは10年以上も前のこと
きっとユナさまのことを考えていたのではないでしょうか」
にこりと笑ってそう言う
ユナは少し顔を赤らめた
「キーナにそんな事言われたら期待しちゃうわ」
嬉しいけれど、ぬか喜びはしたくない
「王子は誰をも魅了する美貌の持ち主と言われているし、結婚なんて形を取らずにあまたの素敵な人がいるのかも…」
ユナがそんな不安を口にした
キーナはユナのその言葉を聞いて微かな疑問が浮かんだ