姉弟ものがたり
姉と弟


「おい姉ちゃん!いい加減、起きろって」


安らかな夢の中にいるであろう姉の遥に届くように、弟の優は声を張り上げて激しくその体を揺する。

しばらく揺すってから手を離してみると、激しすぎて脱げてしまった布団を、目を瞑ったままで引き寄せた遥は、そのままもぞもぞと布団の中に潜っていった。


「……今日はお休みだよ、ゆうくん。だから、お昼まで、寝かせ……て」

「もう昼、過ぎてんだよ!」


ようやく聞こえた寝ぼけた声に我慢できずに怒鳴り返すと、頭まで被っていた布団を掴んで無理やり引き剥がす。

しばらく目を瞑ったままで布団を手探りしていた遥だが、届くところにないとわかると、途端にキュッと手足を縮めて丸くなった。


「姉ちゃんに問題」


そんな亀のような、アルマジロのような姉に向かって一言。

意識が僅かにでも浮上している今なら、これが効くはずだった。
< 1 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop