姉弟ものがたり
姉と弟
「おい姉ちゃん!いい加減、起きろって」
安らかな夢の中にいるであろう姉の遥に届くように、弟の優は声を張り上げて激しくその体を揺する。
しばらく揺すってから手を離してみると、激しすぎて脱げてしまった布団を、目を瞑ったままで引き寄せた遥は、そのままもぞもぞと布団の中に潜っていった。
「……今日はお休みだよ、ゆうくん。だから、お昼まで、寝かせ……て」
「もう昼、過ぎてんだよ!」
ようやく聞こえた寝ぼけた声に我慢できずに怒鳴り返すと、頭まで被っていた布団を掴んで無理やり引き剥がす。
しばらく目を瞑ったままで布団を手探りしていた遥だが、届くところにないとわかると、途端にキュッと手足を縮めて丸くなった。
「姉ちゃんに問題」
そんな亀のような、アルマジロのような姉に向かって一言。
意識が僅かにでも浮上している今なら、これが効くはずだった。
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