姉弟ものがたり


「今日は何の日だ」


問いかけてしばらく黙っていると、案の定「なんの、日……?」とようやく目覚めの兆しが見え始める。

そんな遥を見下ろしながら、ジリジリした思いで待つ。


「……ゆうくんの誕生日」

「違う!!」


ようやく出てきた答えがとんちんかん過ぎて堪らず声を荒らげると、枕元に置かれた目覚まし時計にチラッと視線を送ってから、また遥に視線を戻す。

その遥はといえば、未だ手足をキュッと縮めて丸くなったまま、眉間にキュッと皺を寄せて、表情だけは考え込んでいる。


「じゃあ……わたしの誕生日!」

「そろそろ本気で怒るぞ」


妙にはしゃいだそのテンションは明らかに起きている人のものだが、その瞳は未だピッタリと閉じられたまま。

隙があればそのまま寝てやろうという魂胆が見え見えで、本当にどうしようもない。
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