姉弟ものがたり
「……学さんみたいな良くできた人が、よく姉ちゃんなんかと付き合ってくれてるよな。今まで見捨てられなかったのが奇跡だよ」
「……まなぶ、くん…………?」
このままでは正解にたどり着いて遥が目覚める前にタイムリミットが来てしまうので、もうほとんど正解とも言えるヒントを出してやる。
ここまで来てようやく薄らと目を開けた遥は、首を捻るようにして壁に貼られたカレンダーを見上げ、数秒ほど沈黙してから大きく目を見開いた。
「ああー!!!」
悲痛な叫び声を上げる遥の次の行動を予測して、一歩ベッドから離れると、案の定起き上がった拍子に跳ね飛ばされた布団が優の足元に落ちた。
その勢いのままに、遥は続けて目覚まし時計に掴みかかる。
「ゆうくんってば、何でもっと早く起こしてくれなかったの!!」
目覚まし時計を掴んだ腕をブンブン振り回して抗議の声を上げる遥に、堪らず額を抑えてため息をつく。