姉弟ものがたり
「ほら姉ちゃん、ティッシュ。学さんのハンカチに鼻水付けるなよ?」
「いいよ、気にしなくて。優くんので足りなかったら、これも使って」
本編を観終わり、きっちりエンディングまで聞いてから外に出てみると、遥の顔が涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。
「なんとなく予想はしてたけど、ここまで酷いとは思わなかった……」
上映中に隣から激しく鼻水を啜り上げる音が聞こえて、なんとなく嫌な予感はしていたけれど、想像を上回る凄さに弟といえども若干引いてしまう。
「だって、すっごくいいお話だったから……!」
ぐすぐす言いながら涙を拭って鼻をかむ遥の背中を、学が優しくさする。
「そうだね、最後のシーンは僕も感動しちゃったよ」
入口から少し外れたところに避けて、遥が落ち着くのを待つ。
「うう……鼻がヒリヒリする」
遥の手には、大量の使用済みティッシュ。
「そりゃ、そんなにかんだら鼻も痛くなるだろ。トナカイみたいになってるしな」
優が差し出したポケットティッシュは空になり、学が渡した分も半分は減っていた。