姉弟ものがたり
「俺も、こんな映画を作りたいと思いました。実力はまだまだ遠く及ばないけど……いつか」
高まっていく気持ちにグッと拳を握り締めると、柔らかく肩を叩かれた。
「応援しているよ」
学の真っ直ぐな言葉と柔らかい笑顔に、更に気持ちが高まっていく。
「そういえばね、まだ言ってなかったけど、僕もこの映画は前から気になっていたんだ」
「えっ、学さんもですか?」
てっきり、遥が観たがっていたものに学は合わせただけだと思っていた。
照れくさそうに笑う学が、視線をあげて空を見上げる。
来た時はまだ青かった空が、今ではすっかり茜色に染まり、紫に変わっていこうとしている部分まである。
「この作品はね、もともと舞台用の台本として書かれたものなんだよ」
そう言えば、ニュースでチラッとそんな話を聞いたような気がする。
「ちょっと前までは、学生演劇の台本としても人気があってね。色んな学校の演劇部が上演したりしていたんだけど……知らないよね?」
素直に首を縦に振って答えると、一度下りた視線が再び持ち上がる。