姉弟ものがたり
「何度も起こしたよ……。ちなみに、今ので五回目だから。約束忘れていつまでも寝てる姉ちゃんが悪い」
「ゆうくんの薄情ものー!おにー!あくまー!!」
このままでは埒があかないので、子供みたいなことをわんわんと喚き散らす遥の腕を掴むと、顔の前に目覚まし時計の文字盤を突きつける。
「遅刻」
短的に現実を告げると、ようやく思い出したらしい遥が、ハッとしてベッドの上に目覚まし時計を投げ捨て、慌てたように部屋を飛び出していく。
「やれやれだな……ほんとに」
ドタバタと階段を駆け下りる音を聞きながら、しわくちゃになっているシーツをピンっと張り直し、足元に落ちた掛布を拾い上げてその上に掛け、ベッドを整える。
放り投げられた目覚まし時計は、ベッドの横にある棚の上に。
壁にかけられたカレンダーを見上げれば、日付ごとに区切られた枠組みから大きくはみ出したカラフルなその文字が、嫌でも目に止まった。