姉弟ものがたり


「家で、食べませんか?俺、何か作ります」


ここまで、映画のチケットも飲み物も、遥の分も合わせて三人分、当然のように払ってくれた学に、これ以上財布を出させるのは気が引けて、けれどこちらが出せばやんわりと手で制されるから、せめてものお礼にと考え出した提案。

けれど、学が驚いたように目を見開いたのを見て、慌てて大きく手を左右に振った。


「す、すみません、変なこと言って!ただ、なんとなく言ってみただけなので!!せっかくだし、美味しいもの食べたいですよね。今のは、忘れてください!」

「お待たせー!……何かあったの?」


駆け寄ってきた遥が、ワタワタする優と、驚いたような顔の学を交互に見つめて首を傾げる。

キョトンとした遥に視線を移した学は、驚いたような顔を穏やかな笑みに変えて口を開いた。


「遥ちゃん、晩ご飯は、優くんが家で美味しいもの作ってくれるって」

「えっ、ほんとに?」


嬉しそうに目を見開いた遥が、子供みたいに「やったー!」と飛び上がる。

あんまりぴょんぴょん跳ねるものだから、周りの人達からの視線が痛い。

瞳を輝かせたままで振り返った遥が、優を視界に映して嬉しそうにふふっと笑う。
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