姉弟ものがたり
「お言葉に甘えてもいいかな?僕も久しぶりに、優くんの手料理が食べたいしね」
見れば、学も遥と同様嬉しそうに笑っている。
「早く行こー!」
先行く遥のあとを追って、学も歩き出す。
少し遅れて優も歩き出し、二人の後ろを歩きながら冷蔵庫の中身を思い浮かべる。
「……自分で言っておいてアレですけど、大したものは出せないですよ?」
二人の期待が大きいのが伝わってくると、途端に自信がなくなってくる。
ついでに言えば、買い物は遥を無事に送り出してから行くつもりだったので、冷蔵庫の中身にも自信がない。
「ゆうくんの作ったものはなんだって美味しいから大丈夫!」
「遥ちゃんに同意」
しかし前を行く二人は、そんな自信のない呟きもものともしない。
二人の屈託のない笑顔にプレッシャーを感じないわけではないが、自分から言い出した手前、ここはやれるだけやってみるしかない。
「あんまり期待しないでくださいね」
それでも一応、一言断っておくが、きっと楽しそうな二人には届いていない。