姉弟ものがたり
「未来のことはまだわからないけど、優くんは何も心配することないよ」
穏やかな笑顔に、フッと空気が緩む。
「ゆうくん、ゆうくん!」
そこに遥の能天気な声が合わされば、さっきまでの異様な空気が完全に払拭された。
「ご飯、何にするか決めた?」
うつ伏せで頬杖をついた格好で、足をパタパタ動かす遥が、満面の笑顔で問いかける。
「まだだったらわたしね、チキンピラフが食べたい!」
やかんがカタカタ鳴る音で我に返り、火を止める。
ふう……っと詰めていた息を吐き出すと、遥に向き直ってカップを突き出した。
「姉ちゃんがこっち来て学さんのお茶いれるなら、作ってやってもいい」
「作ってくれるの!!やるやるー」
勢いよく体を起こしてこちらに向かう遥から学に視線を移すと、改まって頭を下げる。
弟として、ここにいない両親の代わりに伝えたいことがあった。
「姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
顔を上げれば、頭の上に優しく手を乗せられて、ポンポンと弾むように撫でられる。
「こちらこそ」
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