姉弟ものがたり
「玉葱、鶏肉……」
冷蔵庫から取り出した材料を作業台に並べて、フライパンを取り出す。
「まなぶくんはここね、わたしはこっちで、ゆうくんがここ!」
リビングからは、やたらとハイテンションな遥の声が聞こえる。
スプーンを並べているだけだというのに、楽しそうで何よりだ。
その間に、米を洗ってザルにあけ、玉葱をみじん切りにしていく。
鶏肉は少し大きめに切って下準備を済ませたら、再び冷蔵庫に戻って今度はバターを取り出す。
「あの女優さんね、最初は舞台女優だったんだよ。それがね、初めて出たドラマが大ヒットして、今では映画もドラマも、もちろん舞台も色んなところで大活躍の有名女優さんになったんだよ!」
「よく知っているね、遥ちゃん」
リビングから聞こえてくる和やかな会話を聞くともなしに聞きながら、バターを入れたフライパンを火にかけて、玉葱と鶏肉を炒める。
「この間ね、特集してたんだー。無名時代は、母校の演劇部に演技指導しに行ったりもしていたんだって」
「そうみたいだね」