姉弟ものがたり
“まなぶくんとデート”
「浮かれすぎて遅刻とか……。ほんと、どうしようもないヤツ」
ため息混じりに部屋を出ようと振り返れば、今度はドアのすぐ横、壁にハンガーでかけられたワンピースが目に止まる。
その一着だけがわざわざハンガーにかけられて、しかも見えるところに出してあるということは、きっとそういうことだ。
「どうか学さんが、姉ちゃんに愛想を尽かしませんように……」
誰にともなく願うように呟いて、優はワンピースをハンガーから外して腕にかけると、ついでにその下に置いてあったショルダーバッグも手に取って、遥のあとを追いかけるように部屋を出て一階へと向かった。