姉弟ものがたり


「ごめんね、ゆうくん。僕、こう見えてヤキモチ焼きなんだ」


「時と場合によっては、例え相手が優くんでも」と笑う学はどこか不敵で、初めてそこに、穏やかなだけではない一面を見た。


「……こ、今度は、俺のいないところでお願いします」


それだけ言うのが精一杯で、未だに何が起こったのかわからず放心状態に陥っている遥を残して、優は空になった皿を素早く積み重ねて逃げるようにその場を離れる。


「うん、気をつけるよ」


通常通りの穏やかな学の声を背中に聞きながらキッチンに向かうと、両手に皿を持ったまま一つ深々と息を吐く。

まさか、いつも穏やかな学にあんな一面があったとは思いもしなかった。


「学さん、意外と大胆なんだな……」


人は見かけによらないという言葉を改めて実感した優は、そうっと二人の様子を伺うようにリビングに視線を送る。

未だ魂が抜けてしまったように放心する遥の頬を、ここぞとばかりに突っついて遊んでいる学は、いつもと変わらない柔らかな笑みを浮かべていた。





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