姉弟ものがたり
「意識してそうしているんじゃない、いつだって自然体なんだ。嘘のない言葉に、心のままに移り変わる表情、それから純粋な優し……」
自分で言っていて途中で恥ずかしくなったのか、学が照れくさそうに笑って言葉を止める。
「遥ちゃんは遥ちゃんのままで、今のままでいいんだ。そんな遥ちゃんだから、好きになったんだから」
一度視線を落として靴を履いた学が、再び顔を上げていたずらっぽく優を見つめる。
「今の、遥ちゃんには内緒ね」
「恥ずかしいから」と笑った学がドアを開けると、すっかり暗くなった外から入り込んできた空気が少し肌寒い。
「優くんだって、そんな遥ちゃんが好きなんだよね。だから、色々してあげたくなるんでしょ?」
それは答えを必要としていない問いで、もっと言えば、問いに見せかけたただの確認だった。
違うとは言えず、かと言って認めるのもしゃくだったから、複雑な顔で立ち尽くす。
そんな優を見て、学は可笑しそうに笑った。