姉弟ものがたり
「それじゃあ優くん、おやすみ」
笑顔で手を振る学が閉まったドアに遮られて見えなくなると、何とか振り返した手を下ろして深く息を吐く。
無邪気で、真っ直ぐで、いつだって自由な、寝坊助で遅刻魔の、小学生のような姉。
「……嫌いではない、かな。……多分」
問題点は多々あれど、憎めないから結局は世話を焼いてしまう。
そうやって、何年も共に過ごした。
懐かしい日々が蘇りそうになったとき、リビングのドアの向こうから微かな呻き声が聞こえて我に返る。
そろそろ叩き起こして、ちゃんとベッドで寝かせるか……。
「ほんと、姉ちゃんは幸せ者だよ」
ダメダメ過ぎて困った姉は、ダメダメなりに幸せな日々を過ごしているようで、本当に何よりだ。