姉弟ものがたり
遥*幸せ者
「いっただっきまーす!」
休憩室に響き渡る程の声を上げて手を合わせる。
「今日は朝から随分ご機嫌だと思ったら、お弁当の日か」
隣に座る友人も呆れるほどの浮かれ様で二段重ねのお弁当箱を広げると、一番初めに目に付いた玉子焼を早速箸でつまみあげる。
「やっぱりコンビニよりも、ゆうくんのお弁当だよね!愛の込もり具合が全然違うよ」
薄く焼き色の付いた玉子焼は、かじった瞬間に広がる甘さに思わず頬が緩む。
「遥の弟くんって本当に優しいよね。
自分の分を作るついでにって、遥の分も作ってくれてるんでしょ?」
ハグハグと玉子焼をかじって、今度はウインナーに狙いを定める。
「毎日市販のお弁当だと飽きるからって、朝一の講義がないときは大抵作ってくれるよ」
焦げ目のついたウインナーにトロッとかかった甘辛い醤油ダレが、ご飯によく合う。
「遥はほんと、幸せ者だね。
優しい弟くんに素敵な彼氏さんもいて、羨ましいな」
折りたたみ式のお弁当箱を開けて、手作りのサンドイッチを頬張りながら友人が呟く。