姉弟ものがたり


「小山くん、さっきからここにすごいシワが寄ってる」


伸ばされた腕が、なんのためらいもなく眉間に触れる。
柔らかい指先に何度もそこを突つかれ、仕方なく再び顔を上げた。


「先輩がちょっかい出してくるから進まないだけです。
お気遣いいただけるならちょっと静かにしてもらっていいですか」


「ごめんね」と笑って引っ込む腕に、もう一つため息をつく。
そういう無防備なところも、そっくりなのだ。


「そうだ、小山くんは甘いもの好き?」

「…嫌いじゃないですけど」


それから、“静かにする”という言葉の意味を知らないところも。


「じゃあね、これあげる。
疲れた時には甘いものがいいんだよ、あとたくさん考え事した時も」


楽しげな笑顔で差し出されたのは、茶色い紙袋。
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