姉弟ものがたり
「なんですか?これ」
「おやつに食べようと思ってたやつだよ」
「いや…そうじゃなくて」
会話が通じないところもまたよく似ている…などと思いながら、受け取った紙袋を開けてみる。
「…パン、ですか?」
「パンだよ」
中から出てきたのは、コロネと呼ばれる馴染み深いパンだった。
「食べていいよ、小山くんにあげる」
「いいんですか?先輩のおやつなくなっちゃいますよ」
「大丈夫だよ、もう一個あるから」
そう言って鞄から同じ紙袋をもう一つ取り出して見せる先輩に、思わず笑みが溢れる。
「ありがとうございます、じゃあ遠慮なくいただきます」
笑顔で頷き返す先輩が自分の分を取り出したので、こちらも手を止めてもう一度まじまじとコロネを見つめる。
柔らかい生地は香ばしく焼け、中のクリームからは甘くほろ苦い香りが漂う。