姉弟ものがたり
「ここのパンね、すごく優しい味がするの。
とっても幸せな気分になれるんだよ」
一足先に自分の分を頬張っていた先輩が、嬉しそうに微笑む。
見れば見るほど似ているところはたくさんあるけど、やはり一番は…その笑顔。
何でもないようなことで幸せそうに微笑むその姿が、とてもよく似ていた。
「先輩、すっごく美味しいので今度お店教えてください」
似ているところを見つけるたびに、無意識のうちに惹かれていた。
「小山くんがそんなにパン好きなんて知らなかった。
じゃあ今度一緒に行こうね」
一人にしたら何をやらかすか心配で、危なっかしいから目が離せなくて、ついつい目で追いかけてしまう。
「まずは駅の方に行くでしょ、それから駅前通りをずーっと真っ直ぐ行くの」
“やつ”にそっくりな人に心動かされたことがどうにもしゃくだが、それは今更どうしようもない。
「飽きるまで行ったらね、お店とか全然なくなって来るんだけどそこまで行けば見えてくるんだよ」
どうしようもなく守ってあげたい、ずっと側で笑っていて欲しい…。
「煉瓦で出来た小さいお店なの、名前はね“エトワール”」
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