姉弟ものがたり


「ただいま」

「あっ、お帰りゆうくん!」


リビングに入ると、ソファーの上でだらしなくくつろぐ遥が目に入った。


「姉ちゃん今日は早いんだな」

「うん、今日は遊ばないで帰ってきたからね」

「遊ばないでって…小学生じゃあるまいし」


そのまま部屋を横切ってキッチンに顔を出すと、夕食の準備をしている母に声をかける。


「そういうゆうくんは珍しく遅かったね、居残り?」

「まあ、そんなとこ」


再び部屋を横切ってドアを開けると、「ねえ、ゆうくん」と不意に背中に声がかかる。
振り返れば、遥がソファーに膝をついて背もたれに顎を乗せた格好でこちらを見つめていた。


「迷ってるうちにね、誰かに取られちゃうこともあるんだよ」


遥の言葉に、ドクンと大きく心臓が脈打った。
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