姉弟ものがたり
「今行くー」
気だるげに返事を返して体を起こすと、大きく体を伸ばしてドアを開ける。
階下から漂ってくるカレーのいい匂いと、談笑する声に誘われるようにゆったりとリビングに向かう。
その途中で不意に頭に浮かんできた二つの笑顔に、思わず足を止める。
「…俺は断じてシスコンじゃない」
咄嗟に呟いてしまった言葉は虚しく廊下に響いて消える。
堪らずついたため息をスッと吸い込んで足を進めると、いつからそこにいたのか…リビングのドアを背に得意げに笑う姿があった。
「わたしはね、別にブラコンって言われても嫌じゃないよ。
だって、ゆうくんのこと大好きだから」
その笑顔があまりにも真っ直ぐで、何となく負けたような気がした…。