姉弟ものがたり
小さく息を吐いてアルバムを閉じると、冷めたコーヒーをテーブルに置いて天井を見上げる。
忘れたはずの過去が今更になって重く胸にのしかかり、切ない記憶が漣のように押し寄せる。
感傷に浸って見上げる天井は、何時もの何倍も色あせて見えた。
ふと、足元で携帯が震える。
いつもよりも長いその振動は、どうやら着信を知らせているようで、慌てて拾い上げた勢いそのままに相手を確認することなく耳に押し当てる。
「もしもし!」
勢い込んで尋ねると、しばらくの静寂のあと電話の向こうで小さく笑う声が聞こえた。