姉弟ものがたり
「そんなに慌てなくても、ちゃんと出るまで待ってたわよ」
何処か懐かしいその声音に、ハッとして画面に表示された名前を確認する。
時に、偶然とは思えないような事が現実には起こりうる。
こうして連絡を取るのは、一体どれくらい振りだろうか…。
再び携帯を耳に当てると、クスクスと楽しげな笑い声が聞こえた。
「驚いた?それとも、もうとっくに私のことなんて誰だか解らなくなってるかしら」
その話し方は昔からちっとも変わっていない。
妙に大人びた笑顔と話し方、セーラー服とのアンバランスさが異様に皆の注目を集めていた、あの頃のまま…。
「…真緒…?」
呟くように発した言葉のあとにはしばらくの静寂、そして応える声が続いた。
「久しぶりね佐久間、元気そうでなによりだわ」
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