姉弟ものがたり
今頃彼女は、ホッとしたように肩の力を抜いている。
安堵した笑みを浮かべて、自分と同じようにそっと過去を思い出している。
何となく…そんな気がした。
「ねえ、真緒」
今ならば、あの時の約束を守れる。
遠い日に交わした、君とのささやかな約束…。
「夢を叶えられて良かったね、おめでとう。
これからも、ずっと応援してるからね」
何となく、彼女が電話をかけてきた理由がわかったような気がした。
何も聞こえない電話口の向こうで、彼女は笑ってくれているだろうか…それとも、ずっと待ち望んでいた台詞に泣いてしまっただろうか…。
しばらくそのまま、彼女の反応を待つ。
時計の秒針がちょうど一周回りきろうとしていたところで、小さく息を吐くような音が聞こえた。
その音は心なしか震えていた。