姉弟ものがたり
「まなぶくーん!!」
顔を上げれば、大きく手を振りながら駆け寄ってくる遥の姿が目に入った。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
息を切らせて駆け寄ってきたその姿が、何とも愛おしい。
「こっちこそ、急に呼び出しちゃってごめんね、せっかくのお友達との時間を邪魔しちゃって」
「平気だよ!まなぶくんが急に“会いたい”なんて珍しいからちょっとびっくりしちゃったけど」
肩を上下させて微笑むその頬は、上気してほんのりと赤い。
どうしようもなく、この笑顔に会いたかった…。
「遥ちゃん…」
そっと手を取って引き寄せると、バランスを崩して倒れ込んできた体を強く抱きしめる。
トクトク…と早いリズムで鳴る鼓動を感じて、また少し腕に力を込める。
今まで、こんなに強く抱きしめたことはなかった。
壊れ物を扱うように、そっと…優しく…包み込むようにしか抱きしめたことがない。
何も言わず、何も聞かず、ただただ遥はされるがままになっている。