東堂くんは喋らない。
…東堂くん…?
「…俺は、別に焼きそば早く食いたいとか、迷子防止とか…そんなこと考えてないから」
人混みの中。
東堂くんが足元を見つめながら、ポツリ、ポツリと言葉をこぼす。
「…そうじゃなくて…」
「…う、うん」
チラッと私を見た東堂くんと、私の視線がぶつかって
「…別に理由なんてないんだよ」
パシッと私の手が、東堂くんの左手につかまる。
「ただ、繋ぎたいから繋いでるだけなんだけど」
いちいち勝手に理由つけないでくれる?
そう言い放った東堂くんの声は、いつも通り冷たい。
その冷たさとは裏腹に、しっかり握られた手に私は混乱する。
…なんか、今の東堂くんの言い方…
私と手を繋ぎたい、って言ってるように聞こえたんだけど…
…え!?
なんで!?