東堂くんは喋らない。
「うん、なんかいい感じだな!」
何回かバトン練習を流すと、山本がご機嫌で集合をかけた。
「とりあえずまだ日はあるし、今日はこの辺で終了するか!」
「賛成~」
疲れ切っている様子の柑奈がさっそく賛成する。
柑奈は運動神経はいいのだけど、特別好きではないみたい。
まぁでも、やる時はきっちりやってくれるから、頼りにしてるけどね。
「んでは続きまして、親睦会にうつりま~す!」
終わってまったりモードになりかけた私たちの真ん中で、山本がそう宣言した。
「え?親睦会?」
「そ!優勝するためにはまず!チームの絆を深めることが必要不可欠!というわけで、ラーメン食い行くぞ~」
そして柑奈と遠藤くんの肩を強引につかみ、誘導していこうとする。
「えぇ~?ラーメン?」
夏海ちゃんもちょっと呆れた声を出しながらも、笑顔で後に続いた。
ラーメン、か…
「……」
「…行く?東堂くん」
…後に残された私たち二人。
東堂くんはちょっとだけ、考えるように私を見つめると
「…いいや、パスで」
そう言って、山本達とは逆方向に歩き出そうとした。