東堂くんは喋らない。




「おいっ、ちょ待てよ!」




いつの間にか戻ってきていた山本が、キ〇タク風にそう東堂くんの肩をつかんで引き留める。




「言っとくけど親睦会は強制参加で~す、欠席は許されませ~ん」



「………横暴かよ」



「何とでも言え!なぜなら俺の言うことは絶対だから!なぜなら俺は体育祭実行委員長だから!」




いつになく偉そうな山本。


こういう奴に肩書きを与えては危険だと、私は思った。




「…山本」



私は見かねて山本に声をかける。



「いいじゃん別に、またの機会で…」



「だってよくねーだろ」




山本が私を遮って、言った。




「このままじゃよくねーだろ。
お前らいつまでも、ずっと同じところにいるつもりか?」



「……」



「本格的に練習始まる前に、わだかまり失くしてくんねーと困るのはコッチなんだよ。だから、な!行くぞ」




そして私と東堂くんの背中をバンッと叩いて、先に歩き出した。




「…バカかアイツ」



東堂くんがそんな山本の背中を、鼻で笑う。




「わだかまりなんて何もないのに。もう全部終わってんのに……な?」



「……う…うん」


「…んじゃ、行くか」


「……うん」




東堂くんの背中に続いて、私もノロノロと歩き出す。








“もう全部終わってる”







…どうして






こんなに胸が痛いの。










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