東堂くんは喋らない。
「えっうそ、黒沢彼氏いないんだ。可愛いのに意外だな~」
「何言ってんの。山本って、やっぱチャラいよね~」
学校近くの、安くてうまい!と学生に大好評なラーメン屋にて。
運ばれてきた豚骨ラーメンに舌鼓をうちながら、突然恋バナを始めたのは山本。
「チャラくねーよ、俺こう見えて超一途だし?」
口元にラーメンの汁をつけた山本が胸を張る。
「えー?じゃぁ、山本の好きなタイプってどんな人なの?」
「え?そうだなー…」
夏海ちゃんの質問に、うーん、と腕組みをして考え始める山本。
「可愛くて、頭が良くてしっかり者で、ちょっと口は悪いけど実は友達想いで優しい女子…かな?」
「えー?なにそれー」
夏海ちゃんにアハハと笑って合わせてる山本だけど、その視線がチラリと柑奈を捉えたのを私は見逃さなかった。
当の柑奈は、素知らぬ顔でチャーシューを食べている。
「…で、み、峰岸はどーいう男がタイプなわけ?」
と、若干緊張した面持ちで柑奈に話を振り始めた山本。
柑奈は、一瞬だけ山本に目線をやって、
「チャラくない人」
ズバリとそう言い放って、再び食べるのを再開した。
「俺じゃん!」
山本がなぜか目を輝かせているが…
そっとしておこう。