東堂くんは喋らない。
「東堂は?好きな女子とかいんの?」
と、それまで笑って皆の話を聞いていた遠藤くんが、突然東堂くんに話を振り始めた。
ゴホッ…
と、なぜかむせたのは私。
「ちょ、香弥大丈夫ー?」
隣に座っていた柑奈が、すかさず私の背中をさすってくれた。
「……ノーコメントで」
そんな私には目線もくれず、黙々とラーメンを食べながら東堂くんが答える。
「教えてくれよ、俺東堂とあんまり喋ったことなかったしさ、純粋に興味あるんだけど」
遠藤くんが、裏表のなさそうなキラキラスマイルで東堂くんを見つめている。
夏海ちゃんも、興味津々、と言った感じだ。
…そうだよね、東堂くんあんまり喋らないし。ましてや恋バナなんて、滅多にするタイプじゃないしね…
「教えてやればー?東堂」
山本がニヤニヤ笑いながら、そんなことを言った。
やっ山本、お前って奴は…!
東堂くんも私と同じ思いだったのか。
山本をギロリと睨む。
「うるさい黙れ」
「おいっ、なんか俺にだけ当たり強くね!?」
「うるさい黙れ」
「それだけかよ!」
ギャーギャーと騒ぐ山本と冷静な東堂くん…
…今日も2人は相変わらずだ。
でも、私はもう二度と、東堂くんと前の距離には戻れないような
そんな気がした。