東堂くんは喋らない。
東堂くんと私の距離。
それから数週間が過ぎ、いよいよ学校全体も体育祭本番モードに。
放課後に体育祭の練習をするクラスも増え、私たちもトラックを使ってリレーの練習をするようになった。
「うん、いい感じだな!」
何回か流して走り、山本がご機嫌そうにバトンをいじりながら言う。
「峰岸!バトン超もらいやすいぞ!さっすが俺らだな!」
嬉しそうな山本とは反面、柑奈は深刻そうな表情だ。
「あのさ山本。バトン受け取る時、ウインクするのやめてくれる?吐きそうになるから」
「東堂、走るの速いねほんとに。なんかスポーツやればいいのに、勿体ないよ」
隅の方では、夏海ちゃんが東堂くんに話しかけていた。
「もうちょっとこう、腕真っ直ぐ振るようにしたら、もっと良いと思うけど」
「……わかった。こう?」
「うん、こういう感じ」
真剣に夏海ちゃんの話を聞いている東堂くん。
陸上部の夏海ちゃんは、やっぱりこの6人の中でも抜群に頼りになる存在だ。
そして最近、東堂くんとよく2人で話しているのを見かける。
東堂くんが女子と話しているのを見るのはレアだから、なんだか…
「松原」
ボーッと東堂くんと夏海ちゃんを見ていたら、遠藤くんが声をかけてきた。