東堂くんは喋らない。
「俺のバトンどう?なんか、もらいにくいとか、ある?」
「いや、全然、超もらいやすいよ」
そう言うと、遠藤くんは安心したようにニッコリ笑った。
「マジで!よかった~、実は俺、走るのあんま得意じゃないんだよね、リレーとかも実は苦手」
「えぇ?そうなの?」
「そうなんだよ、いや、ボール持たせてくれたら我ながら最強なんだけどさ」
真剣な顔でそう言う遠藤くんに思わず笑ってしまう。
「なに笑ってんだよ」
そんな私を見て、遠藤くんも笑った。
「いや、なんか遠藤くんの悩み方、おかしくて」
「おい!どう意味だそれ!俺だって悩みくらいあるって」
「え~?」
遠藤くんとは二年で初めて同じクラスになって。
席もあんまり近くじゃないから、そこまで話したことなかったんだけど、こうして話してみると面白いし、話しやすい。
バスケ部のエースでイケメンだから、一部の女子には王子様、なんて言われてるみたいだけど、そんなことを全く感じさせない親しみやすさだ。
「松原もなんか部活やればいいのに」
クルクル手首を回しながら遠藤くんが言う。
「うーん、なんかやりたいなとは思ってるんだけどね、なんか入りそびれてここまで来ちゃった」
「何だそれ!」
遠藤くんがまた笑う。