東堂くんは喋らない。




「もったいなさすぎ、運動神経いいのに」


「遠藤くんほどじゃないよ。遠藤くん、バスケ部エースだもんね!
一回見てみたいなぁ、バスケやってるとこ」


「じゃぁ見に来れば?」



軽い感じでそう言う遠藤くんに、え、と思わず目を瞠る。



「いいの?」


「もちろん、入部希望者見学者、いつだって大歓迎」


「マジで!行く行く、あたしバスケ好きだし」


「そっか、じゃー待ってるわ」




んじゃ、今日はそろそろ部活顔出し行くから、と遠藤くんは爽やかな笑顔を残し去って行った。



さすが王子様。帰り際も爽やか~。




ふ、とそこで背中に誰かの視線を感じて振り向いた。



瞬間、じっとあたしを見ていた東堂くんと目が合う。




「…と、東ど…」



フイッと、あたしが声をかけるより先に、視線を逸らされる。




「…山本、俺もそろそろ帰るわ」


「え?おいっ、お前は部活ないだろうが!ちょ、東堂―――」



そう山本に告げ、山本の引き留める声は完全無視して歩き去っていく東堂くんの背中は、あっという間に遠ざかっていった。






……近づいたと思ったら離れてく。




そしてそれは、もう二度と――




縮まらないのかも、しれない。







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