東堂くんは喋らない。
「……あのさ、」
東堂くんが真っ直ぐに、あたしを見据える。
「…俺…」
「松原!」
その時、カバンを肩にかけた遠藤くんがやって来た。
「今日、リレー練習ないんだろ?もし暇だったらバスケ部見に来いよ」
「えっ…いいの?」
「もちろん!どうせ体育祭の練習で全員は集まらないしさ、緩くやってるだけだから」
ニッコリ、遠藤くんが笑う。
「あ…うん」
なんとなく東堂くんを見ると、東堂くんもあたしを見ていて
でも目があった瞬間、すごい速さで逸らされてしまった。
「……」
「あ、よかったら東堂もくる?」
遠藤くんが東堂くんにもそうフレンドリーに声をかけるけど、東堂くんはチラッと遠藤くんを見ただけで
「…パス」
あっという間に教室を出て行ってしまう、東堂くんの背中。